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<校長通信> 閉塞社会を突破する若者たち

 サスティナビリティ(持続性)やレジリエンス(回復力)の著名な研究者であるロックストロームが、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界点)を分野別に科学的数値で提示し、気候変動や生物多様性の分野で既に限界値を超え危険域に迫っていると警鐘を鳴らして10年が経過する。この間、国連総会においては、SDGs(プラネタリー・バウンダリーの範囲内での持続可能な開発目標)が全会一致で採択され、世界各地で官民総出の取り組みが始動しグローバルトレンドとなっている。

 一方、社会経済思想家の斎藤幸平は、人類による地球への過剰負荷の現況=「人新生」を環境危機の時代とし、地球的課題の解決には、「脱成長」、「脱資本主義」以外にないと主張する。資本主義経済下でのSDGsはまやかしであるというわけだ。新型コロナウイルスの発生は、欲望の資本主義が熱帯林の奥地へ現地人を開発に追い込んだ結果で、パンデミックという有事に対応できない脆弱な医療体制は、平時の採算性を優先し過度の合理主義を煽った新自由主義の当然の帰結と言える。

 大人たちの議論が行き詰まり夢も期待も信頼も失いかける中、既存の社会システムをひっくり返してパラダイムシフトを始める若者たち=ビジョン・ハッカーが登場した。将来のビジョンをハッキングし(書き換えて)、ネガティブな展望を吹き飛ばしていく何とも痛快で頼もしいアップデーターではないか。


<校報誌 栃の葉 第55号(2021.7)>

2021.07.31

白鴎大学足利中学校