毎年春に、谷川俊太郎の「春に」を教室に掲示してもらいます。『目に見えないエネルギーの流れが 大地からあしのうらを伝わって ぼくの腹へ胸へそうしてのどへ 声にならないさけびとなってこみあげる この気もちはなんだろう・・』この詩に深く共感し心揺さぶられる感動から、始業式には、虚子の『春風や闘志抱きて丘に立つ』と合わせて、すごいだろう、いいだろう、とばかりに紹介しています。新年度を迎えた思春期のこどもたちへ熱いエールをという思いです。果たしてうまく届いているかは、毎年自信がありません。
「渡良瀬川の川面を温かい春風が撫で始め・・」という定番の書き出しを、入学式式辞の冒頭に入れています。続けて、「渡良瀬川の長堤を菜の花が埋め尽くし、黄色い絨毯が春風に揺れる」というくだりも入れています。光り輝く春の自然力によって人間のモチベーションが高められるというのは、誰しもが異存のないところと思います。
この渡良瀬川の上流、草木ダムの湖畔に富弘美術館が佇んでいます。先日、随分と久しぶりに足を運びました。4月末に星野富弘さんの訃報に接し気になっていたからです。ティールームの窓越し近くに、見事な株立ちのアオハダが新緑の柔らかい葉を茂らせていました。数々の心打つ詩画の一つに「折れた菜の花」があります。『私の首のように 茎が簡単に折れてしまった しかし菜の花はそこから芽を出し 花を咲かせた 私もこの花と同じ水を飲んでいる同じ光を受けている 強い茎になろう』
<校報誌 栃の葉 第61号(2024.7)>